活動紹介

伊豆市で育まれた技術と地元を愛する人々を巡るFW(7月9日)

今回は、東部サテライトに常駐する内山が中心となり、訪問先の調整等を行い見学型のフィールドワークを実施しました。私自身、着任してからまだ6か月という限られた時間のなかで、知りえた情報や出会えた人たちはそれほど多くありませんが、その中でも学生に是非知ってもらいたい場所や人々を紹介する機会となりました。それぞれの訪問先では、事業に対する考え方、現在抱える課題、そしてこれからの構想などにつき多くのことをお話しいただきました。参加した学生の皆さんも、地域に生きる人たちの想いや苦労話などを伺い、それぞれが感じるものがあったのではないかと思います。
まず、最初に訪れたのは、「オートクラフト.IZU」です。ここでは、「おもしろ自転車」と呼ばれるいわゆる変わった自転車を制作、日本全国に販売やレンタルを行っています。クラシックカータイプのものや動物の形をしたもの、タンデム自転車や車いすをそのまま乗せて走れるものなど、アイデアに溢れるデザインばかりです。次期社長の高田さんからは、「自転車を怖がって乗れない小さな子供のとっかかりとなっている」ことや「公園などで管理を任される高齢者が子供たちに乗り方を教えたり、一緒に乗ってあげることで笑顔が増え元気になる」ことなどが紹介されました。「おもしろ自転車」を通じて、子供が自信をもち、高齢者が生きがいを感じる、そんな波及効果を感じている高田さんが、これからも自転車づくりを通じた地域貢献を進めていきたいと熱く語る姿がとても印象的でした。

工場の2階にある事務所にて。真ん中にいらっしゃるのが高田さん。明るく豪快な笑い方で、場の雰囲気が一気に明るくなります。工場の2階にある事務所にて。真ん中にいらっしゃるのが高田さん。明るく豪快な笑い方で、場の雰囲気が一気に明るくなります。


工場の敷地内には、試乗用の自転車が何台か置いてあり、学生たちも試乗させてもらいました。工場の敷地内には、試乗用の自転車が何台か置いてあり、学生たちも試乗させてもらいました。
工場の敷地内には、試乗用の自転車が何台か置いてあり、学生たちも試乗させてもらいました。



次に訪れたのは、「上の家」です。ここは、井上靖の母親の実家であり、昔多くの文豪が訪れた伊豆市湯ヶ島地区が推進する「文学の里づくり」の重要な拠点施設となっています。築150年ほどたつ民家は老朽化し、2020年から工学院大学建築学部の学生が協力し、部屋の一部の改装を行ったということです。施設では、観光協会の関係者が丁寧にご説明くださり、歴史と文化を感じるひとときでした。見学後には、ここの管理を任されている地元あすなろ会のおかあさんたちと交流する時間があり、そのなかで「もっと多くの人に訪れてもらうためにはどうすればよいか」などといった話も出されました。

上の家



3番目の目的地は、「下山養魚場」です。山道をひたすら進むと柿木川の源流にほど近い場所に養魚場が見えてきます。こんなところに養魚場が?と驚きますが、ここでは年間を通じて温度変化がない湧き水が山から流れ、養魚場の隣ではこの水を利用してわさびの栽培もしています。社長の下山さんからは、昔はアメリカにまで出荷していたことや円安やあまごの価格暴落で苦労したこと、そんな中でも思考を巡らせ、自分自身であまご専門の飲食店を開く決断をしたことや「三倍体」の養殖にたどり着いたエピソードなど、いろいろとお話を伺うことができました。コロナ禍で営業が伸び悩む中、地域の飲食店を盛り上げようと、バーガープロジェクトを考案し、「修善寺バーガー」ブランドを作ったそうです。フィールドワークに参加した学生たちもランチに「あまごフライバーガー」を皆で味わいました。

下山養魚場
下山養魚場
下山養魚場
下山養魚場

最後に養魚場からさらに山奥に入ったところにある地域を訪問しました。そこは、大平柿木地区の大野と呼ばれる地域で、11世帯が暮らす集落です。ここには、「子安地蔵」と呼ばれる古いお地蔵さんがあり、子安神として地域の人に大事にされ、今でも月に一回地域の女性たちが集まり、祈祷をしているといいます。一度は火事で焼けたお堂を地域の人たちがお金を出し合い再建し、今では集落のちょっとした集まりにも利用されているようです。私は現在この地域の高齢者から昔の暮らしについてヒアリングを行っており、いろんな時代の様々な物語を紡いで大きな絵屏風にしたいと思っています。

今回は見学型のフィールドワークということもあり、必ずしも学生たちの興味関心と合致しない内容であったかもしれません。ただ、地域活動にかかわる学習においては、当然のことながら地域に暮らす多様な人たちを知ることがとても重要です。おもしろ自転車づくりと養魚場、子安地蔵を大事に守る地域の人たち同士は直接の接点がないように見えますが、その地域の歴史や環境を共有し、実は相互に依存して暮らしているのです。
学生たちには、自分の関心ある切り口から質問をすることで理解を深め、そこから課題を発見し、自分ができることへとつなげていってほしいと思います。今回のフィールドワークがきっかけとなり、学生それぞれがもう一歩踏み込んだ実践へとつなげ、自身の探究テーマを深め発展させることができればうれしいです。